The Idiot, the Curse, and the Magic Academy

Chapter 59



寮を出た俺達は丘を降り、前にも来た転移の魔法陣がある建物にやってきた。

「おー、ここだ、ここだ。町の外に出たいって考えればいいのか?」

転移の魔法陣は登録されているところだったら魔法陣に乗って、その場所を思うだけで飛べるらしい。

「えーっと、ちょっと待て。どうする?」

フランクが俺を止めて、セドリックに確認する。

「うーん、平日だから時間もそんなにないし、ツカサは初めてでしょ? 今日はどんなもんかを知るだけでいいんじゃない?」

「それもそうだな……ツカサ、ちょっといいか?」

相談は終わったらしい。

「何ー?」

「まず、町の外にはいくつかセーフティーポイントがある」

「セーブポイントだ!」

知ってる!

「人生にセーブなんてないが、魔法陣を使えばそこに飛べるわけだ」

マジレスで流された……

「セーフティーってことは安全なん?」

「そうだな。そういう簡単な結界が張ってあるし、見張りの魔法使いもいる」

見張り……

「強いん?」

「強いぞ。魔物が来たら追い払ったりするしな。お前も将来、職に困ったらそういう職業に就くといいぞ。実際、戦闘タイプの魔法使いはそういう職業に就く奴が多い」

「確かにそっちの方が向いてる気がするね」

兵士みたいなもんだろうか?

呪術師でウハウハ作戦が失敗したらそっちの道でもいいかもな……

あ、その場合は腕がないわ。

「まあ、考えてみるわ。それで魔法陣に乗れば、そこに行けるのか?」

「そうなるな。この町も門があるんだが、ほぼ使ってないから外に出る時はその魔法陣で飛ぶ。それで本題だが、さっきも言ったが、そういうセーフティーポイントはいくつかあるんだよ」

「色んなところに飛べるわけだ」

本当にあっちの世界にも欲しい技術だわ。

「そういうことだな。それでさっき俺とセドリックが話していたのはどこに行くかってこと。今日は最初だし、そこまで時間があるわけじゃないから簡単なところに行く感じでいいか?」

時計を見ると、4時だった。

向こうでは昼の1時だが……

「お前らの夕食って何時?」

「7時から9時まで。最近は日が長いから7時までは明るいが、それまでには帰りたいな」

そう考えると、3時間もない。

「そういうことなら簡単なところでいいわ。素人だし、お前らに任せる」

「じゃあ、湖にしよう。綺麗なんだぞ」

「へー……」

ちょっと気になる。

「よし、そこの魔法陣に乗って町の外の湖に行きたいって念じろ」

フランクが魔法陣を指差したのでフランクの背中に回り、押す。

「頼む。一番槍は任せた」

武家の名誉ぞ。

「日和るなー……すぐ来いよ。くだらんイタズラをするなよな」

フランクは何かのフリをしながら魔法陣に乗った。

すると、すぐにシュンッと消える。

「…………イタズラしろってことかな?」

「…………すごいフラグを立てたよね」

セドリックもそう思ったらしい。

「どうする? あいつがツッコんでくるまで待つか?」

定番の待ちぼうけ。

「いや、フランクはそういう冗談を言わないし、本当だろうね。ツカサ、後詰は僕に任せて行きなよ」

セドリックにそう言われたので魔法陣に乗ると、町の外の湖に行きたいなーっと念じる。

すると、視界が一瞬で変わり、大きな湖とその先の地平線まで見える平原が見えた。

「すごっ! 異世界だ!」

これが俺が思い描いていた異世界だ。

「すごいだろ?」

呆然と湖と地平線を見ていると、フランクが声をかけてくる。

「すげーな。〇ッシーは?」

絶対にいそう。

「それはいない」

いろよ。

いるべきだ。

「久しぶりに来たけど、やっぱり綺麗だねー」

湖と平原を見て、感動していると、セドリックも転移でやってきた。

よく見ると、魔法陣の近くには帯剣したおっさんがいる。

多分、この人が見張りだろう。

「久しぶりってあまり来ないのか?」

「4月に一通り回ったきりかな? あまり戦いは好きじゃなくてね」

「そりゃ悪いな」

「いや、君がいるならいいよ。行くならフランクと2人になるんだけど、2人だと僕も戦わないといけないからね。3人なら楽なもんだし」

まあ、動ける奴が2人いればな。

「女子と行かねーの? 強気で強そうなのが2人いるだろ」

正確にはトウコを入れた3人だけど。

「4月にその女子を含めた皆で行ったんだよ。でも、女子と行くと面倒ごとが多くてねー。面倒を見ないといけないというか……」

「イルメラとユイカは強気っていうか、勝手に突っ込むからな」

ノエル、頑張れ。

実はトウコもだ。

「ふーん……俺は突っ込まんから安心しろ」

「そうだねぇ……君、脳筋のくせに戦いが始まると、やけに冷静だもんね」

「体は熱く、心は冷たく……意外にもちゃんと武術の基本ができてたもんな」

それが普通なんだけどな。

勇猛さも大事だが、冷静さも大事なのだ。

「まあなー。しかし、綺麗だなー……夕日とか綺麗そう」

湖は水面が太陽に反射して光っており、神秘的だ。

「夕方はすごいよ。あ、一応、言っておくけど、日曜の夕方にここに来たらダメ」

「なんで?」

「土曜は次の日が休みだからって暗くなるまでバイトしている人が多いんだけど、日曜は翌日のことがあるから人が減るんだ。だからカップルばっかりだね。そして、その延長で暗黙の了解ができた。要はカップル以外は来るなってことになったらしい」

「俺もそれ聞いたな。すげー場違いなんだってな」

マジかよ……

「魔物が出るんじゃねーの?」

「フランクがセーフティーポイントって言ったでしょ? 湖の周辺はあまり魔物が出ないんだ。出ても見張りの人が倒してくれる」

セドリックにそう言われたので見張りの人を見る。

「大変っすね。カップルだらけで辛くないんですか?」

「日曜の夕方は特別手当が出るんだよ。じゃなきゃやってられん」

見張りの人が苦笑した。

「そりゃ嫌ですわ。絶対に来ないでおこう」

地獄だ。

「ツカサはそのうち来そうだけどね」

セドリックがふふっと笑いながらつぶやく。

「なんでだよ」

「まあ、頭の隅には置いておきなよ」

行かねーけどな。

何が悲しくてカップルの巣窟に来ないといけないんだ。

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